2015年7月18日土曜日

室戸路寸感   三  シットロト踊り 

   シットロト踊り
 旧暦六月十日(七月二十五日)、室戸市の歴史を彩る民俗芸能、シットロト踊りが近づいた。この踊りと唄は、いつの時代に始まったか定かでないが、奈良師の地蔵堂の庵主が、ある夏の蒸し暑い晩に浜辺で涼をとっていた。夜もいよいよ更けてきたころ、節も面白く唄い上げながら行く女人がいた。
あまりの面白さに魅せられた庵主は、浜づたいに「硯が浜」まで追いかけ女人に教えを請うて、唄と踊りの伝授を得た、と伝わる。
 今一つは、藩政初期に始まると伝えられ、漁師三蔵なる者が、腕白小僧にいじめられている人魚を助け、お礼に豊漁を招く踊りと唄を授けられた、とも伝わる。
 踊りの構成は、音頭一人、太鼓一人、鐘一人と、踊り子は多数からなる。その姿はそろいの浴衣に赤いたすき、わら草履に手甲、投編み笠。笠の周りには五色の色紙が幾重にも短冊状に張られ彩り豊かである。笠には猿の縫いぐるみが、円錐形状に数十匹飾られ、愛らしい。この飾り物の猿は踊り納めると「難を去る」縁起物として、遠洋への出漁者や旅立つ友の無事を祈って手向けられる。唄は四十八節、今は十四節が残され、「まず急げ」から始まり「引き踊り」で終わる。
 今では踊り子が少なく、誰でも参加出来るが、明治期には各鰹船から二人ずつ選ばれて踊ったもので、ひごろ不真面目で素行の悪い者は踊る事が出来なかった、また、シットロトを踊らせてもらえない若者は、嫁の来てもなかったという。


 この唄と踊りには、魚の供養・豊漁祈願は然る事ながら、船が沖に出、魚群《なぶら》に出会ったときや、漁師の家の祝い事、新船・新築・結婚祝いには必ず踊られたが、今は旧暦六月十日のみに限られている。赤銅色に
日焼けした漁師達の舞姿が楽しみだ。










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