おどけ花
数十年ぶりに「おどけ花」が咲いたぞ、と知人の知らせ。はやる気持ちを抑え案内を請う。
この行事は室戸岬津呂に古くから伝わる一月の奇習の一つで、初嫁の家が舞台となる。最御崎寺のご本尊、虚空蔵菩薩の初祭り十三日。初嫁の家の者たちが、お参りに出掛けた留守を狙って行われる。
仕掛けるのは近隣のおばちゃんたちである。
門口には竹竿、長さ一丈(約三㍍)余り、先端に扇を二本開いて付ける。一本は初嫁の実家の弥栄を、いま一本は嫁ぎ先の弥栄を念じる。
扇の要に、女性の袋帯三本を二つ折りにし結ぶ。要より三・四尺下に、角樽を結び喜びを添える。袋帯には福招来をかけ、初嫁の末長い幸せと、早く子宝に恵まれることを祈念して飾ってあった。
この花を仕掛けられた家は、簡単な手料理を作り近隣者をもてなす。近隣者も、有り合わせの料理を持ち寄り歌い興じる。主として女性の祝宴である。
埋もれた伝統に花を咲かせたのは、未婚者の多さに憂い少子化を憂いながらも、地域を愛するおばちゃんたちの底力と知恵であった。この花が咲き続けることを念じながら見せてもらった。
この奇習を「花立て」ともいう。 (儿)
高知新聞「閑人調」掲載
室戸では、結婚式に向かう花嫁方の家族、関係者が乗っている車は赤い布を車の先に掲げてどんなことがあってもバックしない、後ろに戻らない、というしきたりがあったように思い出します。嫁入りしたら添い遂げてほしいという願いが込められていたように思うのですが今も見ることができるでしょうか。
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