2011年12月28日水曜日

ロード

          ロード
                            
  知人が単行本を刊行し、その出版祝賀の宴に招かれた。
 この新刊には土佐一円で一生懸命に暮らし、地域を生き抜いた人々の姿が生き生きと描かれる。幾筋もの道が示され、今を生きる私達への大きなメッセージである。
 招かれた方々は高知市を中心に九市七郡にまたがる。それぞれの地域に活路を見出したユニークで個性豊かな人たちだ。こうし方々が語り、出版物に描かれる土佐の民俗や古老の体験談、方言などは、暮らしの豊かさを感じさせる。
 晩秋の夜を和やかに楽しませてもらった。
だが、こうした風俗や方言にはすたれてしまったものもある。日々の暮らしの中で二度と見ることも耳にすることも、体験することもできないことに寂しさが募った。 
 息子の運転に身をゆだね、帰路につく。二時間あまりの道中の終り近く、「かもしれないロード」と書かれた交通標語標識を見つけた。何があるか分からないと想像力を働かせ、安全運転を、ということだろう。
 そう、この先に何かがあるかも知れない。この日出会った人々の「道」と重ね、思いをめぐらせる。
 このロードの先、私がかえろうとしているところには、「老子道徳教」の「道〈タオ〉」や「徳〈テー〉」のようなエナジーあふれる街がある、かもしれない、と。
                                        儿
            高知新聞「閑人調」掲載

2 件のコメント:

  1. 私の尊敬する方より『土佐の鯨男 柳原勝紀伝』という著書を恵送して頂いた。これを読んで思ったことは、土佐の鯨男は土佐捕鯨創始者、多田五郎右衛門とその嫡男の吉左衛門の尽力により鯨男の誇り高い気風が生まれ、脈々と近現代にまで伝わっていることを知った。つまり、伝統がなければ、偉大な人物は現れないことを感じたのである。
    土佐には坂本龍馬、寺田寅彦のような大人物を輩出しているが、彼らとて、偉大な先人に倣ったからこそ偉大たり得たのだと思う。彼らは「温故知新」を熟知した結果の評価なのだろう。

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  2. 黒潮人 様
     素晴らしいコメントを頂き痛み入ります。土佐古式捕鯨創始の末裔として、嬉しく存じます。さて、大隅清治・柳原紀文両氏の共著で『土佐の男・柳原勝紀伝』が刊行されたことは、室戸の近代捕鯨史にとって非常に喜ばしいことです。この本をもとに、柳原勝紀氏の研究が深まることと存じます。 先ずは、お礼まで。

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