2012年10月1日月曜日

土佐の艶話 第三話 クジラんといて

                 絵 山本 清衣

     
     クジラんといて  

 地球上で最大の哺乳動物、クジラの生殖器は巨大で雌にしても雄にしても、ほかに敵うものはおらん。そんなクジラに纏わる、こんな話があった。
 むかしもむかし、おらんくの池にゃ潮吹く魚《びんび》がどっさり游ぎよった。その頃の室戸の漁師は、未だ未だクジラを捕ったりせざった。
 むしろ、仲ようやりよった・・・!と。
 ある長閑な春の日。耳崎の真言谷《しごのたに》の浜で、一頭のシロナガスクジラの雌が、ぽかぽか陽気にさそわれてヘソ天になって寝込んでおった、と。
そこへ、津呂のオトコシが一人きて、クジラの腹の上に乗ってミホトを珍しそうに見よった。
 ところが、オトコシの足が滑ってミホトの中へスッポリ落ち込んでしもうた、は。
さあ、大変なことじゃ、こりゃ困った。早うここから出んと溺れてしまうぞ。けんど、あたりがヌルヌルで滑って滑ってどもこもならん!。オトコシが、もがきゃぁもがくばぁヌルヌルの御汁が増えてどうにもならん。ところが、ヌルヌルが増えたお陰でミホトからスポッと滑り出てほっとした、と。
 やがて、クジラが目を覚まして云うに「そんなにクジラんといて」と云うて帰り支度をした。クジラは帰《い》にしなに「オオノ、心地がよかった」と云うて、潮を何度もなんども吹きながら、いんだ、という。
                   おおの、ばかばかしぃ〜〜〜。
                            
                           文  津 室  儿

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